2018  樹脂/彩色

W:65 D:50 H:90

月 光

月光5
月光4
月光7
月光3
月光2

夜の山道を車で登って行くと、動物だけでなく普段見慣れて
いるものがより感動的に現れる。

信州だったか秋田だったか、深夜に林道を走行していた時、
神々しいまでに輝く満月に遭遇した。
深夜の山奥は真っ暗闇の世界だが、車のヘッドライトを消して
夜道に出てみると、その時ばかりは月明かりを受けた木々が
白々と浮かび、幻想的な景色が広がっていた。
きっと夜行性の動物にとっては、明るすぎるほどの夜だった
のかも知れない。

女性の姿を借りるのは、定石通りすんなり決まり、あとはどんな形
(ポーズ)にするか、どの辺りの女性の顔にするか心の中で練った。

自分の中に彫刻作品の古典として在る、月光(がっこう)菩薩像に
も大きく影響された。

祈りのポーズにすることも、最初からあった。
正確には祈りの合掌ではなく、もう少し緩やかな願いのポーズにした。

女性であることとポーズとしての形が決まると、インド辺りの女性の顔に
するしかないと自然と思えた。

やや前屈みに両肘を張って、おでこを頂点とした三角の形と裾広がりの
ベールの二等辺三角形で構成し、シンメトリーを強調した。

月光8
月光9
月光11
月光16
月光10
そんな情景を彫刻に出来ないかと思った。

例えば、雨上がりに見える虹や雲、夕焼けや闇など
実体のない事象を絵には描けても彫刻では表現
出来ない。
なので何か具体的な形を借りて表現するしかない。
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