W:28 D:60 H:50 樹脂 2011年
撮影:長谷川修
手の彫刻
高村光太郎の「手」は仏像の印相からイメージ
されたと言われています。
精神性の高い優れた作品として自分の中では
模範のひとつになっています。
*粘土 初期
*粘土 完成間近
手
「目は口ほどにものを言い…」とことわざにありますが、
手もそれらに劣らないほど表現力=表情があります。
その意味から手だけをモチーフにした作品も多く、
文字通り手近なところにある題材として興味を惹かれます。
作って行く上で難しかったのは、手首を切る位置と最終的な見せ方でした。
彫刻の基本的な見せ方は、作品そのものと台座を固定させ、それを展示台に乗せて観てもらいます。
今回の作品は水平でしかも前後に長い形だったので、「手」と台座を固定する金具の位置とそれ自体の形状を
工夫する必要がありました。
単に「手」の真ん中から心棒を伸ばして台座に直結すれば簡単ですが、それではあまりにも恰好が悪く、
逆に手首の端と台座を安易に固定すれば重心が前に行き過ぎ、転倒する恐れがありました。
結果的に台座の形状を工夫し、取り付け金具もZ型にして見た目の安定を図りました。
方向や歩調が違っても人はそれぞれに己の道を
進んでいます。
進む道が運命だとしたら、運命はきっとこんな形を
しているのだろうと思いました。
「道」この場合の道とは車の通る道路ではなく、人が独り通る
道です。
後ろは過去であり、前は未来でなければなりません。
あるいは後ろは拓かれた道で、前方は閉ざされた道無き道かも
しれません。