指揮者
ヘルベルト・フォン・カラヤンは、1960年代から来日して数多くの公演を行い
日本でも最も人気のある指揮者だった。
私は中学生のころ、小さなラジオでその演奏を聴いた。
交響曲を聴くのも初めてだったのだろう。
電波状況の悪い中で、トランジスタラジオに片耳を押し当て聴いていたことを
憶えている。
そんなちゃちな媒体を通して聴きながら、フルオーケストラの音の深さや
広がりに単純に感動し、魅了された。
造りはじめたのは、2020年の5月中旬。
秋に開催する白岡市美術家協会展に出品するために制作を開始。
しかし新型コロナの感染拡大で美術展が中止になり、さらに翌年の埼玉県展も
白美展も連続して取り止めとなり、制作も中断した。
完成したのは今年の県展前。足掛け2年の制作期間になってしまった。
クラシック音楽の魅力を自分に植えつけてくれた音楽家であり、
その恩に報いるためにも人物像として造ってみたいと昔から思っていた。
多くはないが、何度かフルオーケストラの演奏会に行った。
数十人の演奏者を指揮棒一本で操る姿は、楽器化された演奏者の群れの中で
“一人だけ人間”と見えなくもない。
極端に言えば、サーカスでの猛獣使いのような英雄に見えてしまう。
大勢の人間を率いる人物には、カリスマ性というのか、人を魅きつける力が不可欠だ。
音楽の世界では、大勢の演奏者を率いる指揮者がそうだろう。
W:65 D:60 H:90 樹脂 2022年
1970年に大阪で万博が開かれていた時だと思う。
来日したカラヤンがベルリンフィルとの公演を行い、それが放送された。
その放送もモノラルのラジオで聴いた。
しかし肝心の曲目は憶えておらず、ただ演奏に先立って流れた
カラヤン指揮の「君が代」に、震えるほどの美しさを感じた。